横浜地方裁判所 昭和44年(ワ)47号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件道路が建設大臣(国)の管理する一般国道一六号線であることは当事者間に争いがなく、それが法定の「指定区間内の国道」であることは明らかであるから、その維持、修繕その他の管理は終局的には建設大臣が行なうものである(道路法一三条第一、二項)。
又、「道路の構造は、当該道路の存する地域の地形、地質、気象その他の状況及び当該道路の交通状況を考慮し、通常の衝撃に対して安全なものであるとともに、安全かつ円滑な交通を確保することができるものでなければならない。」(道路法二九条)し、「道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。」(同法四二条一項)ことは云うまでもない。
ところで、道路構造令、車両制限令の各二条五号によれば、路肩とは「道路の主要構造部を保護し、又は車道の効用を保つために車道又は歩道に接続して路端寄りに設けられている帯状の道路の部分をいう。」とされ、道路法にいう道路に該当することはいうまでなもない。
さてそこで、右の路肩設置の目的、効用のうち「車道の効用を保つ」という意味であるが、これは主として、歩道と車道の区別のない道路において、自動車の走行速度を確保するための余裕幅をとることによつて車道の効用を保つ趣旨と解するを相当とする。
即ち、道路にこの余裕幅がないと、車道の端を通行する自動車は車道を外れた場合直ちに危険となるため、安全の見地上それを外れぬよう自動車の速度が著しく制限されることになり、又速度を出すためには車道の中央に寄つてしまい、結局車道の端の部分は役に立たず道路の効用を著しく阻害してしまうからである。
従つて、路肩に右の目的、効用を阻害するような損傷があるときは、「安全かつ円滑な交通を確保することができない」ことになり、「一般交通に支障を及ぼす」こととなるから、そのような場合は国家賠償法二条一項にいう公の営造物の設置又は管理の瑕疵に該当し、これに基因する他人の損害については国がその賠償の責に任ずべきである。
今、これを本件につき観るに、本件路肩凹部は前認定のように長さ5.3メートル、幅1.5メートル、深さ一二センチメートルの相当大きな損傷であり、(証人城下はこの損傷の程度を「路肩ががたんと段差がついており、水がたまつておりまして、深さも一一センチ程度でありましてその大きさにちよつと驚いたわけです。」と証言している。)又それが車道と接続した部分にあるために、その影響は甚だ大きく、路肩の「車道の効用を保つ」という目的、効用を著しく阻害していると云わねばならない(このことは、証人松下勝二の証言中穴ぼこが相当な程度あつて、水がたまつて、それが放置されているということになると、これは道路の構造上に支障をきたす旨の部分によつても裏付けられる。)。
何故なら、路肩に本件凹部のような損傷があるならば、自動車はとも角、平衡を失しやすい原動機付自転車等の二輪車においては、車道を外れた場合直ちに右損傷部に落ちて転倒する等の危険があるため、安心して道路左側又は左側端を走ることができず、結局前示路肩設置の目的を達成することができないからである。
以上により、本件凹部は路肩の目的、効用を著しく阻害する程度に至つていたことが認められるのであり、これは国家賠償法二一条一項の公の営造物の設置又は管理の瑕疵に該当し、しかもこれにより生ずることあるべき具体的危険を防止するに必要な有効、適切な措置は全然講じられていなかつたのであり、これに基因して本件事故が発生し訴外菅野利夫が死亡したのであるから、国はその損害を賠償する責任がある。
(若尾元 石藤太郎 西理)